五月病の治し方

「あ〜ダメだ。」

そう言ってリビングのソファに倒れこんだのは、昼近くになってようやく起きだしてきたジェット。

「どうしたんだ?」

それを見て居合わせたハインリヒがそう尋ねるが、ソファに寝転んだまま顔だけハインリヒに向けると、

そのままジェットはぶつぶつと言った。

「いや、何かからだが変にだるい気がして、何をする気もおきないんだよ。  ・・・でもその原因がこれといって思い当たらなくて・・・。

だからこう無駄にイライラしたりして・・・。」

「それは五月病ってやつじゃないのか?」

ジェットの言葉にハインリヒは先日ジョーが教えてくれた、その季節特有という症状の名を口にする。

しかしそれを聞いてもジェットは相変わらずあーとかうーとか言ったままごろごろしていて、それを見かねてハインリヒは更に尋ねた。

「はまっていたテレビゲームは?」

「やる気がしねぇ。」

「雑誌は?」

「見たいと思えるものが特に無い。」

「テレビは?」

「・・・おもしろくねぇ。」

「なら他には?」

問いを重ねるうちに少しこちらまでイライラしてきたハインリヒが少し語気もきつく言うと、

ジェットはようやく表情らしい表情・・・困った顔をしてすまなそうに言った。

「本当何する気も起きないんだ。・・・だからアンタがこうして一緒にいてくれるってのに、なにしたいっていう気も・・・。」

「ならこれならどうだ?」

ジェットの言葉にハインリヒはそう言うが早いか、寝たままのジェットに覆いかぶさるようにキスをした。

「え?」

そして驚きで固まるジェットを尻目に続けると言った。

「一緒にいるだけならダメなんだろう?それならこうして・・・こちらから誘ったらどうだ?  これでも今五月病に負けているお前は何も

できないか?」

そして不敵で・・・しかしそれでいて艶っぽく綺麗に微笑んだハインリヒを前に、

ジェットは体中を覆っていた倦怠感が一瞬で消えるのを感じた。

「そんなわけないだろ!」

だから慌ててそう言うと、そのままハインリヒの体を抱き締めて深く口付ける。

そして夕方前にはいつもどおり元気になったジェットの姿があったという。

これといって治療の無い五月病とはいえ、ただでさえ愛しい恋人の極上の笑みと誘いを前にしたジェットにとっては形無しだった。

33324番のキリリク  「誘惑するハインリヒ」とリクエストいたしました。

ハインさんから綺麗に微笑まれて誘って頂けるなんて!

拝見している私が幸せ・・はぁはぁ・・・失礼しました。

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