「光の向こう」

「なあ、ちょっとあれ見てみろよ。」

「ん?」

そんな風にジェットが思わず興奮して声をあげたのは、二人で出掛けた先に立ち寄ったデパートの家具売り場。

だがジェットがそこでハインリヒに示して見せたのは、大型の家具や座り心地のよいソファではなく、

一角に設けられた様々な照明のあるスペースだった。

クリスマスということもあって、いつも以上に様々な光の芸術を生み出す照明が沢山あってどれも通りがかりの人の目を惹いた。

そしてそれはどうやらジェットも例外ではなかったようで、

ふらふらと数々の照明の光に誘われるかのように その場所へと歩いていく。

「まったく・・・。」

そんなジェットの様子にハインリヒも苦笑しながらもついていったのだが、

そこで思わずハインリヒも見惚れるような照明があった。

ただそれはもう照明というよりは、インテリアという一種部屋の飾りという意味合いが強いようで

普通の照明として使うことは到底難しそうだった。

形と大きさだけは普通のスタンドライトの類だったのだが、その電球を覆うのはカラフルな色をした

透明なプラスチック製の石の数々で、その石がこれまた透明なケースに沢山入れられていて

中心にある電球の光がその様々な石の色を通すことで、その周囲に色とりどりの輝きをもたらすそんなライト。

思わずそれにハインリヒが足を止めて見惚れていると、それに気付いたジェットが隣に立って尋ねた。

「何?これが気に入ったの?」

「いや、気に入ったとかいうか・・・その、綺麗だなと。」

そう返すハインリヒの言葉にふーんと何の気なしに頷きながらジェットは値札をめくったのだが、

そこに書かれていた金額に思わず驚いて、再び値札を伏せた。

「何だ、どうした?」

「確かに綺麗だけどこの値段は今の俺には厳しいし、それに買って帰ってもフランソワーズにも怒られそうだ。」

「そうだな、『こんなのどこに置くつもり?』なんて言われそうだ。」

そう言って思わず二人苦笑しあう。

「あ、でも・・・・。」

だがすぐにジェットがそんな風に声をあげたかと思うと、

ちょっと待っていてとハインリヒに残して 他の売り場の方へと走り出した。

それからしばらくして、すぐに戻ってきたジェットは何か買ってきたらしく袋を持っていたのだが

その中身をハインリヒが尋ねると、家に帰るまでのお楽しみなんて言って教えてくれなかった。

「これなら多少はあのライトの気分が味わえるかなって。」

その後他にもいくつか買い物をしてから帰宅の途についたのだが、

自分の部屋に戻るや否や、 ジェットはハインリヒの目前で袋を開けてなにやら作業をし始めた。

出てきたのはプラスチック製の小さなケースのようなものと、袋に入れられた様々な色のビー玉。

そして豆電球とそれに付随する電池ボックス。

さすがにこれらを見ればハインリヒもジェットが何をするつもりかというのはわかった。

「お前自分で作るつもりか?」

「ああ、ちょっと待っててみてよ。」

ジェットはハインリヒの言葉にそう返すと手際よく作業していく。

ケースの中にビー玉を詰めてその中心ぐらいに豆電球を埋めて、

それからケースの蓋の中心部に穴を開けて 豆電球のコードを通す。

それからケースの蓋を透明なテープで留めれば、あっという間に即席の小さなライトが完成した。

「で、スイッチ入れてみてよ。」

そう言ったジェットに電池ボックスを渡されたハインリヒは、言われるがままにそのスイッチを入れた。

「・・・綺麗だ。」

確かに売り場で見たライトよりは規模も大きさも何もかも劣るかもしれない。

しかし今のハインリヒにとってはこの小さな、でもそれでいてキラキラと虹色の輝きを放つこのライトが

何よりもかけがえのない美しいものに思えた。

するとそんなハインリヒの様子に満足したのか、

ジェットは笑顔を浮かべると満足そうに言った。

「良かった、アンタにそう言って貰えるだけで俺は嬉しいし、それに・・・。」

そしてライト越しのハインリヒにそっと口付けると続ける。

「この光越しのアンタ、いつも以上に本当綺麗だ。」

「・・・・そんなことを言っても、何も褒美はでないぞ。」

ジェットの言葉にそんな風に返すハインリヒだが、

その頬は照れの為かうっすら赤く染まっていて しかもその口元に浮かべられていたのは苦笑だった。

「でもこれくらはいいだろう?」

だからジェットはそう更に言葉を重ねるともう一度、先程よりも深く唇を重ね合わせ、

それから二人離れて、ただ見詰め合って微笑を浮かべた。

光の向こう、自分に向けられるその微笑だけでもう十分な褒美だなんて そんな風に思わずジェットが考えたということは、

結局ハインリヒが知る由などなかった。


*注意:果たしてこれでライトが作れるかどうか     
  確認はしていらっしゃらないとの事です。

38000番キリリク ステンドグラスかマーブル(ビー玉)を題材にお願いしました。
自分の萌えアイテムばかりいつもすみません。
手作りライトに映えるハインリヒ。
光の中でラブラブな二人を頂戴いたしました。
いつもいつもありがとうございます!

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