※このお話はあきら様のサイト「Sweet Planet」にございます、49のお題No8「秘密」の続きです。
(残念ながら閉鎖されました。)
展示許可ありがとうございました!
「居場所」
その場所を求めて来た
残酷な現実の中でも・・・
確かに存在する・・・
それは・・・
少しの照れくささを胸に玄関のドアをノックする。
「お帰りなさい。」
穏やかな声色…。廊下を走る足音…そして
「今日は早かったね。」
開けられたドアの奥にはいつもと変わらない微笑。
「あぁ…。」
少し笑って見せてから部屋へと足取りを進める。
「それ…」
照れくささの根源…手に持った紙袋を…いや、その中身をいつ渡そうかとタイミングを掴みきれずにいた
俺の背後から不思議そうな声色がかかった。
「あっ、これか?大したもんじゃないんだが…。お前さんに…」
「分かった!朝頼んだ買い物だね?忘れてなかったんだ。」
ようやくタイミングを掴んで話を切り出した俺の声はジョーの明るい声に遮られた…。
買い物…そういえば頼まれていたような…。
朝ジョーに頼まれて・・・そう頼まれた・・・が、忘れていた・・・。
「開けていい?」
「…あ…あぁ…。」
忘れていた事を弁解する余裕すら与えてはもらえなかった。
曖昧な返事に何も疑問を感じるそぶりも無く、ジョーは紙袋の中を探っていた。
「あれ?」
驚きの声は当たり前で、買い物を頼まれたことなど少し前に思い出したくらいだ。
ジョーの予想していたものは入っているはずもない。
「…これ…」
「あぁ…すまない。頼まれ物は明日で良いか?」
ジョーの聞きたい事とはおそらく違うであろう答えを返す。
「そうじゃなくって…これ…」
「偶然見つけたんでな…。金がなかったからお前さんのだけだ。」
以前にジョーに言われた事と同じ言い訳をわざと放つ。
「…本当の気持ちを知りたいんだけど?」
真紅の瞳が悪戯っぽく微笑む。やっぱり来たか・・・。俺は心の中で呟いた。
「お前のことが…好きだから…だと思う。」
小さな白い陶器のカップを両手で大切そうに持つジョーに囁くと
真紅の瞳は柔らかく細められた。
ジョーの提案でカップは食器棚に入れず、窓から見える風景に溶け込んでいた。
夏の強い光を浴びた白がやけに眩しく見える。
「お前さん、飽きないのか?」
出窓に手をかけて外を…いや、カップを眺めているかのように見える
ジョーの背後から声をかける。
「こうして見ていると、ずっと何年もここにあったように見えるんだ・・・。不思議だね。」
…風景に溶け込んで…。そこにあるのが当たり前のように…。
「・・・ん?あぁ・・・」
「ここに帰ってきたみたい・・・。」
帰って・・・?
ジョーが言うように、2つのカップはまるでそこが居場所のように自然と溶け込んでいた。
俺はジョーの傍らに腰をかがめて穏やかな色をした瞳に視線を合わせた。
「…そうだな・・・。」
窓から入り込んだ風が優しく頬を撫ぜた・・・。
それは穏やかな時間が静かに流れているのを感じさせる。
「ジョー、そろそろ出かけるか?遅れたら他の奴らに何を言われるか…。」
「そうだね…。」
それは・・・
優しい空気が流れる空間…
まるで主を待つように穏やかに…
ただ流れて・・・
そう
きっとここが俺の居場所・・・
流れ行く時の中で
そう感じたのは
間違いじゃない・・・
確かにそれは存在する・・・
ジョー・・・
・・・お前の居場所は・・・・?
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